【要約】

  • 開成中学・高校の柳沢校長先生の「人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜」を拝聴して、私見を交えて書いたブログである
  • 多様性を認め合い自己肯定感と自信を高めることが大切である
  • 会社の組織力強化にはファシリタティブなリーダーを育てる必要がある

【本文】

東京の西日暮里に私立開成中学校・高等学校があります。進学校として有名な学校です。先日、柳沢校長先生のお話を拝聴する機会がありました。

テーマは「人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜」でした。
私は、ビジネス・パーソンにとっても有益なお話しを伺えるのではないか、と期待して会場に行きました。

このブログでは、柳沢校長先生の話を聴いた私が、私の視点で、ビジネス・パーソンの方々に向けて「自分を育てる・組織を育てる~これからのあなたに必要なこと~」を書いてみたいと思います。

「人を育てる〜これからの日本に必要なこと〜」
開成中学・高校 柳沢校長の話を拝聴して私が思ったこと

柳沢校長先生は、中学生・高校生に代表される若者を育てるという視点で語っていました。
高校生は、すぐに大学生になり、やがて何人かは会社員になります。あなたの職場に来ます。
私は、柳沢校長先生の話の殆どが、ビジネス・パーソンにとっても当てはまる、と思いました。

多様性を認める

少子高齢化が進んでいる日本、今よりももっと多様化しないと、日本は生きていけないと仰っていました。
いろいろな国、いろいろな文化、いろいろな考え方、いろいろなXXX、と付き合っていく必要があるということです。

今よりもっとインクルージョンを大切にする必要があるとも言えます。
(インクルーションについては、後の章で述べます)
あなたは準備ができていますか?既に実践していますか?

柳沢校長は、多様性を認める教育が必要だと仰っていました。
人間は社会的動物です。マズローの5段階欲求の承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされることが大切なのだと思います。
ビジネスの世界であれば、多様性を認め合う職場である必要がある、ということだと思います。

自己肯定感と自信を高める

若者の自己認識について、他国との比較を教えてくださいました。
日本の若者は、自己肯定感と自信が、他国と比較してかなり低いそうです。特に20歳〜24歳が低い。
これでは、多様化する中で、自己肯定して自信を持った他国の人たちと、生きていくのは楽ではないでしょう。

「日本は、苦手なことを何とか克服して伸ばそうとする。外国は、得意分野を伸ばそうとする。日本は同調圧力が強い社会なので、皆と同じようにして目立たないようにする傾向がある」と仰っていました。
その通りだと思います。萎縮しちゃうんですよね。皆と同じようにして目立たないようにしていたら、多様にならないのです。自分を隠す必要はないのです。

自己肯定感と自信を持てるようにするには・持てるようになるには、自分が社会の中で求められていると感じられること、居場所があること、これが必要です。否定されない安心安全な場で、自分の意見を自由闊達に言い、自分の意見が受け入れられること、これが必要です。

マズローでいうと、社会的欲求/親和欲求(他者と関わりたい、集団に帰属したい)と承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされることが大切ということだと思います。

柳沢校長は、「垂直比較で褒める」という表現をしていました。
誰かと比べるのではなく、自分で自主的に自律的に到達点を決め、そこに到達する体験を通して、達成感と成功体験を得ることが大切だと仰っていました。どんな到達点でもOKだそうです。

達成感と成功体験を得ることが目標なのであれば、チャレンジすればできるような到達点であることが大切だと思います。できるだけ頻繁に達成感と成功体験を得ることがキーポイントである、と私は思います。
これは、ビジネス変革を実現する際にも当てはまるキーポイントなのです。

「人は、自分より弱い者にはNOと言う傾向があり、自分より強い者にはYESと言ってしまいがち」との事。
もし、あなたが自分もそういう傾向があるな、と思ったら、そのことを意識して注意するだけでも変わるかもしれません。つまり、そうしてしまう危険性がある、ということを意識して、予防しようとするか否かは大きな違いです。

一つの提案はYes Andです。何かの意見・アイデアを言った時、「いいねそれ。じゃあさらに…」と繋げてくれたらどうでしょうか?「あなたの意見が受け入れられ議論の展開に役に立っているよ」と言ってもらっているのと同じ意味があります。

Yes Andの対語はYes Butです。「いいねそれ。でもさぁ…」となったらどうでしょう。「あなたの意見は受け入れられないよ」と言っていることになるのです。

はじめに個がある、そして個と個を紡ぐ

柳沢校長の話で一番共感したのは、「最初に個がある」というお話しでした。
個と個を紡ぐことで多様性を認め合う。

ビジネス・パーソンの観点で言うと、個々にスキルを研鑽し個々がとんがる。
そして個々の多様性を認め合う必要があるのだと思います。
組織には、専門性の高いスタッフが集まっていて、個々の専門性はある領域ではリーダーよりもスタッフの方が専門性が高いという状況になる必要があると思うのです。
まず、自分がコレと思うものを研鑽することが良い、と私は思います。

また、「量の変化は質の変化をもたらす」というお話にも共感しました。
知識の量を増やすには、まずは知識を吸収し理解する段階があり、教え合うこと(吸収・理解した知識を発信すること)で知識は定着し、さらに次の段階では知識は創造につながる、とおっしゃっていました。

ビジネス・パーソンの観点では、まずはスキルを学ぶ段階、次にそこそこ定着したスキルを実際のリアルな仕事で試す段階、次にスキルを自分のものにする段階、最後に組織内のチームで協働して何か新しいモノを創造する段階と進化していく、ということなのだと思いました。

ある領域で部門内においては一流のスキルを持っているとんがった人がいるとします。
その人のようになりたいと思い、学び教えを乞う、そういう人もとんがった人だと思います。

マズローでいうと、承認欲求(他者から価値ある存在と認められたい)が満たされ、さらに自己実現(自分の能力を発揮して創造的活動をしたい)が満たされることが大切ということなのでしょう。

昔、朝ポンキッキを子供と見ていたとき、「とんがれとんがれ」と歌っていた体操を思いましました。
あなたは、何でとんがりますか?
下のYouTubeは歌が始まりますので、公共交通機関の中や職場でこのブログを読んでくださっている方は、音が出ないようにするなど、ご対応ください。
(YouTube: https://www.youtube.com/watch?v=qg47kGAf7S0)

多様性を認める〜そのためにインクルージョンを大切にする〜

最近、多様性という言葉をよく聞くようになったと思いませんか?
同時に、ダイバーシティ(diversity) やインクルージョン(inclusion)という言葉もよく聞くようになった、と私は感じています。

ダイバーシティやインクルージョンに関して、アメリカのガートナー(Gartner)のアナリストの記事に出会いました。(出所:The difference between diversity and inclusion in the workplace – and why it matters

 ダイバーシティとインクルージョンの違いは、

  • ダイバーシティ:多様であることに焦点を当てる。
  • インクルージョン:チームの結束に力点を置く。多様な人々をチームに迎え入れようとする前向きな考え方。

と言っています。

職場においては、インクルージョンを大切にすべきだ、と私は思います。
チームの結束なくして、ビジネス目標を達成することは無理だと思いますし、何より、まとまりのないチームにいるのは楽しくないしストレスを感じるからです。チームの個々のメンバーの良いところを引き出すことができれば、一人では到底達成することのできないようなことも、達成できるはずです。

前出のガートナーの記事は、もう一つ大切なことを言っています。
「多様なことに対して、無意識のうちに偏見を持つのは自然だ」というのです。自分は人種差別主義者ではない、とか性差別主義者ではない、と自分で自分に言い聞かすよりも、無意識のうちに偏見を持ってしまうかもしれないことを認めた方が良い、と言っています。

職場の中で、「アイツは◯◯なヤツだ」というレッテルを貼ったりしていませんか?あなたにはそう見えていても、他の人には異なって見えているかもしれません。
今今の日本は同調圧力が強い社会なので、自分と異なるものを受け入れたくないという感覚が働いてしまう傾向があるかもしれません。

「自分には無意識のうちに偏見を持ってしまう危険性がある」と認めた方が良い、と私は思っています。人間というのはそういう危険性を持った生物だと認める。だから、そうしないように気をつける。職場で偏見を持っても(互いに偏見を持ち合っても)何も良いことはないですから。ひとつの選択肢として、このような考えもあって良いのではないか、と私は思っています。

ガートナーの記事に「インクルージョンはチームの結束に力点を置く。多様な人々をチームに迎え入れようとする前向きな考え方である。」と書かれていました。チームの結束をより強くするためには、多様なメンバーが協働して、チームとして何かを成し遂げること、これを体験すること、これが一番効く、と私は思っています。インクルージョンが大切だと何回も聞かされるよりも、成功体験は効きます。
百聞は一体験に如かず。小さい成功体験の積み重ねを体験することは素晴らしいことだと思います。

議論し合意形成するという場面では、ファシリテーションが役立ちます。
合意形成した後に、合意事項を実施し、適宜振り返り次の打ち手を合意形成する、という場面では、ファシリタティブなリーダー(ファシリテーター型リーダー)の活躍場面です。
ファシリタティブなリーダーについては、後の章で述べます。

安心安全で自分が受け入れられていると思える職場

「安心安全で自分が受け入れられていると思える職場」対語は「不安危険で自分のことを受け入れてくれない職場」でしょうか。後者は完全にブラックな職場といえるので論外だとして、「不安危険」を左端において、「安心安全」を右端において直線で結んだら、あなたの職場はどの辺ですか?左端でもないし右端でもないし、中間のどこかに位置するのではないかと思います。

この章でのポイントは3つです。

  • 否定されない安心安全な場
  • 前向きな話し合い
  • アイデアを紡ぎ合わせようとしている

話し合いの場で、これらのポイントを実現するためには、ファシリテーションが役立ちます。

ファシリテーションとは

  • 人々の活動が容易にできるよう支援し、うまく運ぶように舵取りすること
  • 集団による問題解決、アイデア創造、合意形成、教育・学習、変革、自己表現・成長など、あらゆる知的創造活動を支援し促進していく働き
  • 中立な立場で、チームのプロセスを管理し、チームワークを引き出し、チームの成果が最大となるように支援すること

です。

ファシリテーションする人をファシリテーターと言います。
ファシリテーションする行為をファシリテートと言います。

柳沢校長は、「人は、自分より弱い者にはNOと言う傾向があり、自分より強い者にはYESと言ってしまいがち」と仰っていました。

自分より立場の弱い者に、NOと言ってしまう、Yes Butと言ってしまう、そんな危険性があるということを認識するか否かで変わってきます。
多様な意見を尊重し受け入れましょう。
Yes Andです。これが習慣として身につくまでには、強く意識することが必要です。話し言葉やメールなどの文章で「◯◯ですが、△△」などと「が」を使っている人は多いです。その「が」本当にそこにBUTは必要ですか?

前向きな話し合いをする環境を作り出すのに Yes And は役立ちます。
また、アイデアとアイデアを紡ぎ合わせて、新たなアイデアを創造するための触媒として、ファシリテーションは役立ちます。

ファシリタティブなリーダー、組織力を最大化できるリーダーが求められている

このブログのタイトルは「自分を育てる・組織を育てる〜これからのあなたに必要なこと〜」です。

今まで述べてきたことをまとめると、次の2点に集約されます。

  • 個々人は、組織の中で役立つスキルを身に着けることが大切
  • 組織としては、個々人を受け入れる安心安全な職場であることが大切

個々の人は、自分がコレと思うものを研鑽することが良い、と私は思っています。ファシリテーションのスキルを研鑽したい人もいるでしょうし、プロジェクト・マネージメントかもしれないし、何かの技術的なスキルかもしれません。なんでも良いと思います。大切なのは「そうなりたいと思う強い思い」だ、と私は思います。
柳沢校長が仰る「垂直比較で褒める」です。誰かと比べるのではなく、自分で自主的に自律的に到達点を決め、そこに到達する体験を通して、達成感と成功体験を得ることで、その強い思いを持続させてください。できるだけ頻繁に達成感と成功体験を得ることがキーポイントである、と私は思います。
「そうなりたいと思う強い思い」を持って努力している個を認め、ときには支援する、そんな組織であって欲しいです。

組織として、組織力を最大化するためには、ファシリタティブなリーダーを育てる必要があると思います。

ファシリタティブ (facilitative) は、「物事の進行などを促進する」という意味の形容詞です。
ファシリタティブなリーダーは、ファシリテーションを中核に置きながら組織をリードできるリーダーと言えます。

このブログの最後に、「ファシリテーター型リーダーの時代 (ISBN978-4-8334-1741-9)」という書籍を書いたフラン・リース (Fran Rees) が、前書きで言っている文章を引用します。

「ファシリテーターは、とてもやりがいのある仕事だ。なぜなら、成果を生み出す源泉ともいうべき信頼と協力の人間関係をつくる役割を担っているからだ。高度化し、専門化し、技術革新の目まぐるしい現代社会では、ファシリテーターはなくてはならない存在である。企業などの組織に属する人たちは、ファシリテーターの助けを得て、協力し合い、新たな改革をし、一致団結して、今という時代が突きつけてくる課題に立ち向かっている。
(中略)
組織に
属している人たちが力を合わせて、問題を解決し、計画を立案し、決定を下し、資金や人材といった資源を手に入れとうとするときに必要不可欠なのが、科学でありアートでもあるファシリテーションだ。ファシリテーションとはリーダーシップの一形態だといえる。実に有益なリーダーシップであり、絶対に必要なリーダーシップである。
協力関係というものは、能力のあるプロフェッショナルや従業員がただ寄り集まっただけで自然に生まれてくるものではない(たとえ当事者が心からそうしたいと願ったとしても)。何人かの人がグループという集団を形成して、一緒に計画し、決定し、改革し、実行し、責任を負おうとする場があれば、そこにはファシリテーターというリーダーが必要になる。それは、ファシリテーターが集団の士気を鼓舞し、その持てる力を引き出し、一人の力では不可能なことを達成させるからである。」

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